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- No.01 Lounge
- No.02 Guest Room
- No.03 Tea Room &Hall
bbb haus
ゲストハウスと家具の小さな物語
- No.02:Guest Room -
text: H.L.D. スタッフ 清水
海辺のゲストハウス〈bbb haus(スリービーハウス)〉と家具についての連載コラム第2話は、ゲストルームへご案内いたします。その前に、オーナー夫妻から伺ったゲストハウスができるまでの話の続きを少しだけさせてください。
海の牧場〈The Sea Ranch〉
アメリカ・カルフォルニア州にある海の牧場〈The Sea Ranch(シーランチ)〉をご存知でしょうか?
カルフォルニア海岸に沿って16kmほど続いているシーランチは、1960年代に発足した敷地一帯のプロジェクトであり、『自然環境を破壊せずに人と自然がどのように共生していくか?』をテーマにした宅地開発です。
「ゲストハウス改修前の建物が1972年の竣工ということは、おそらく計画はその数年前の1960年代後半だったと予想できます。いわゆる”ミッドセンチュリー”の時代ですが、建物自体は奇をてらったものでなく、シンプルな建ち方をしていました。bbb hausの計画を進めている最中に、友人からシーランチを紹介いただいたのですが、ロケーションがこの場所と似ていることにまず驚き、60年代のアメリカに北欧文化が入ってきた時代背景とbbb hausの建物が持つ歴史、そして”自然をそのまま生かし土地と共生していきたい”という思いに、重なる部分を感じました」
アメリカデザインと北欧デザインが融合したラウンジ
アメリカに北欧の文化が入ってくるきっかけの一つだったのが、1954年〜57年にかけて北米で催された展示会『Design in Scandinavia』。デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの4カ国から選ばれたデザインが、各地を巡回しました。「アメリカ文化の中に北欧文化が入ってきた風景を想像すると、イームズ・ヤコブセン・ウェグナー・アアルトなど様々なデザイナーの家具があってもいいのでは?」と考えるようになったそうです。それを表現するために、客室は部屋毎に仕立て方を変え、各デザイナーのコンセプトに沿ったインテリアでしつらえられています。
ラウンジを抜けゲストルームへ
階段下にはビーチでの遊び道具が備えられています
福岡出身のイラストレーター山本直孝さんの作品
ゲストルームは、1階2室と2階3室の全5室が用意されています。室内のインテリアはもちろんのこと、部屋の立地や季節、その日の天気によっても見える景色が異なります。窓辺には、少し低めに設計されたカウンターデスクが作り付けられていますので、椅子に腰かけて刻一刻と変化する海の色や空の表情を気の赴くままに眺める、それだけでも心穏やかになれる時間です。
世界に共通しているセンス
海外からの宿泊客も多いそうですが、各々が「あの場所のあの海によく似ているね」と、糸島の景色を前にご自身の記憶を辿りながらお話されるのが印象的なのだそうです。
「国や場所、文化が違っていても、海を見て感じる”世界に共通しているセンス”みたいなものが、あるのかもしれません」
101号室 スワンチェア(フリッツ・ハンセン)
ゲストルームから眺める糸島の海
さて、ゲストルームへ進んでいきましょう。
102号室のテーマはハーマンミラー。1958年にデザインされたネルソンのスワッグレッグデスクには、デスク廻りのコードが納まるよう、天板に丸い穴が開けられています。現代こそ、配線用の穴が設けられていることは一般的ですが、当時すでにその発想を持ち合わせていたことに驚きます。ネルソンとハーマンミラーとの関係は数々のエピソードがあって大変面白いのですが、とても長い話になりますので、いつかの機会にとっておこうと思います。興味がある方は、渡辺力さんの著書「ハーマンミラー物語」をぜひ読んでみてください。
壁付けのハングイットオールは、カラフルなマルチカラーがオリジナルですが、近年新仕様として登場したウォルナットも落ち着いた雰囲気があり魅力的でした。2つ連結させる使い方もいいですね。
102号室 スワッグレッグデスクとワイヤーチェア(ハーマンミラー)
102号室 連結させたハングイットオール ウォルナット仕様(ハーマンミラー)
一方で、アアルトをテーマとした203号室には、109Cコートラックが取り付けられていました。遊び心満載なイームズと対照的に、構造・機能・デザインの3拍子揃ったコートラックはアアルトらしいデザイン。バーチ材ですので、これからの経年変化も楽しみです。
203号室 109Cコートラック(アルテック)
1階のゲストルームにはバスタブが備えられた少し広めのバスルーム。2階のゲストルームはシャワーのみでコンパクトな作りとなっていますが、どちらも静かで落ち着いたしつらえで、細やかな心配りが感じられるタオルやバスローブが用意されています。
102号室 バスルーム
101号室 バスルーム
階段は当時のまま現役で活躍中です。
独特の曲線を持ち、螺旋に倣って切り取られた壁との納まりも丁寧に仕上げられています。白い壁にオークの床材、ステンレスの手摺と、巾木(この場合は”巾石”でしょうか)のコントラストがとても魅力的です。階段好きとしては、見逃せないポイント。
2階ゲストルームへ 美しい階段の曲線
さり気なく置かれたエレファントスツール(チェリー材・ヴィトラ)も可愛らしい
美しく佇む曲線
空間の曲線が階段ならば、椅子の曲線はアームにあり。ゲストハウス内にある美しいアームを持つ椅子をいくつかご紹介します。
ヴァンシャーのコロニアルチェアは、細い材を組合せて接合部も丁寧に仕上げられています。クッションを外すと、座面は籐で編まれており、座枠から取り外し可能です。長年使っていると籐が痛んできますので、ここだけ修理ができるようになっています。
つづいてウェグナーのCH22。
アームに無垢材を用いながらも曲線を加えることで野暮ったさがなく、エレガントな雰囲気。ゲタマのアームチェアが男性的であれば、こちらは女性的なイメージです。当時は職人の手仕事に頼る部分が大きく、量産に向いていないことから廃盤となっていましたが、技術が向上した現在は、当時のオリジナル図面を再現できるようになったそうです。
アアルトのアームチェアは、鋼管によるキャンチレバーを母国フィンランドの生活に馴染むように再解釈してデザインされています。自生するバーチ材を用いて試行した結果、積層させた木材を曲げることによってキャンチレバー構造を実現しました。
202号室 コロニアルチェアアーム(カール・ハンセン&サン)
201号室 CH22(カール・ハンセン&サン)
203号室 アアルトのアームチェア(アルテック)
手元に置きたい愛用品
各部屋には、デンマークの建築家ヴィルヘルム・ラウリッツェンが放送局を設計した際に手掛けた照明が共通して置かれています。丸みを帯びたシェードに光源はLEDを採用し現代の暮らしに合わせた仕様。階段の天井に吊り下げられていたペンダント照明も同じシリーズです。当時ラウリッツェン事務所に務めていたフィン・ユールも自宅で愛用するほど気に入っていたようです。実は彼が手掛けたデザインだったりして…。
VL38テーブルランプ(ルイスポールセン)
VL45ラジオハウスペンダント(ルイスポールセン)
ゲストハウス内には長期滞在者のためにミニキッチンも併設しています。道具はすべて普段使いができ、機能とデザイン、そして価格のバランスが優れたものを選ばているそうです。
1階ミニキッチン 調理道具や食器が備えられています
使いやすさ重視で選ばれたカトラリー
窓辺の小瓶は、福岡県宗像市のガラスウェアブランド「TOUMEI」の作品
さりげなく置かれていたヤコブセンのドットスツールはヴィンテージ品(3本脚のハイスツール仕様)
裏面には当時のロゴと、Danish Controlマークを発見。これは、デンマーク家具品質を保つために使われていた当時の品質保証マークです。デンマークの一部のメーカーが、強度や木材の乾燥状況などを様々な基準を設定し管理した制度で、基準をクリアした家具製品にこのシールが貼られていました。
ヴィンテージDOTハイスツール(フリッツ・ハンセン)
裏面のシールには、当時のブランドロゴ(左)とDanish Controlマーク(右)
2018年のオープンから3年目(2020年現在)を迎える今もなお、より良い空間をつくるために日々考え試行しながら運営を行っているそうです。
「スタートしたときも現在も100%完成しているわけではなく、毎日成長しています。ここに暖炉があってあたたかい炎があるといいなとか、流す音楽をじっくり選んでいきたいな、とか。自然のうつろいや四季折々に色を変える草原、海の表情を時間をかけて観察し、この場所と共生しながらゆっくり対峙できるゲストハウスにしたいと思っています」
次回最終回は、こちらの椅子から。
bbb haus(スリービーハウス)
写真:勝村祐紀(勝村写真事務所)
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Wire Chair DKR
Vitra -
Nelson Platform Bench
Herman Miller -
VL38 Table
Louis Poulsen -
CH25
Carl Hansen & Son -
Eames Walnut Stool
Herman Miller -
VL45 Radiohus Pendant
Louis Poulsen -
Eames Hang-It-All
Herman Miller -
109C Coat Rack
Artek -
Eames Elephant (Plywood)
Vitra -
OW149 COLONIAL CHAIR
Carl Hansen & Son -
CH22
Carl Hansen & Son -
Tolbod
155 Wall
louis poulsen