構造美が際立つ、プルーヴェの名作の限定モデル
フランスの建築家 Jean Prouvé(ジャン・プルーヴェ)が1954年にデザインした「Antony(アントニー)」。パリ近郊のアントニーにある大学都市の学生寮のために作られたラウンジチェアです。滑らかな曲線を描く成形合板のシェルと、それを支える金属フレームを組み合わせた、プルーヴェらしい合理的な構造美が特徴です。その後、学生寮だけでなく、オフィスや待合室、リビングなど、さまざまな空間で使用されてきました。
Vitra(ヴィトラ)では2002年から2012年にかけて製造・販売されていましたが、現在は定番のラインナップから外れており、限定モデルやヴィンテージでしか手に入れることのできない希少なモデルとなっています。
そんなアントニーチェアの新たな限定モデルが、2026年10月1日から12月31日までの期間限定で販売されます。ブラックステイン仕上げのチェスナット材を使用したシェルに、ディープブラック塗装の金属フレームを組み合わせた特別なモデル。素材の豊かな表情を残しながら、全体を深みのあるブラックでまとめた、シックで落ち着いた佇まいが魅力です。シリアル番号入りのプレートや、アントニーのイラストが入った段ボールなど、限定モデルならではの特別な仕様でお届けします。
アントニーの大きな特徴は、スチール製の脚部と、シートを支える2枚の金属プレートを組み合わせた独特の構造にあります。平面的でありながら力強い金属プレートが、座面をしっかりと支え、安定感のある座り心地を生み出します。この構造は、プルーヴェの代表作のひとつである「コンパス ダイレクション」にも通じるもの。装飾によって美しさを加えるのではなく、機能を追求した構造そのものをデザインとして昇華させています。
一方、座面と背もたれには、身体に沿うような滑らかな曲線を描く成形合板を採用。無機質な金属フレームとの対比が、アントニーならではの表情を生み出しています。素材の特性を活かした構造と、身体を包み込むようなフォルムが調和し、機能性と快適性を兼ね備えています。
また、アントニーはヴィトラとジャン・プルーヴェの関係を語るうえでも重要な存在です。ヴィトラの名誉会長ロルフ・フェルバウムが1980年代にヴィンテージのアントニーと出会ったことが、プルーヴェの作品の収集と研究を始めるきっかけとなりました。さらに、この椅子はヴィトラデザインミュージアムに最初に収蔵された椅子としても知られています。
金属と木材、それぞれの素材が持つ特性を活かし、機能性と美しさを高い次元で融合させたアントニーチェア。プルーヴェのものづくりへの思想が感じられる特別な一脚を、この機会にぜひご自宅でお楽しみください。