月刊  「マスターピースとわたし」(5) - 愛すべき夫婦の椅子/[すべて正規品]デザイナーズ家具・ブランド家具通販・北欧家具通販【H.L.D】

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H.L.D. オンラインストア スタッフが、
毎月ひとつの名作=マスターピースに思いを馳せるコラムです。
肩の力を抜いて、普段のページではあまり書くことのないようなことを語ります。

仕事や家事のひと休憩や、帰宅中の電車の中、くつろぎの時間の合間など
是非、気軽にご覧ください。

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第5回愛すべき夫婦の椅子

この椅子を一度も見た事がない人が探す方が難しいかもしれません。私が大学で建築やデザインを学びはじめた頃に、まるで水を飲むかの如く自然と知ったデザイナーズチェアでした。

でも、知っていただけでした。本当にこの椅子の良さやデザイナー、背景を知ったのは、この仕事についてからです。お客様にもよく聞かれます。「これあの有名な椅子でしょ?」って。まさに、その通りなのです。「有名」なのです。

しかし、なぜ70年前に誕生した椅子が今も人々の関心を引き、「有名」でいられるのでしょうか?



まず、当時、家具として使うのは珍しかった素材のプラスチックを使用した事。その事により、コストを抑え、生産性が格段にUPし、多くの人の手に届く椅子となりました。その裏では、幾度の実験を重ねた夫婦の努力があります。そして、多くの人の手だけではなく、心にも響くこの独特のデザインであることが、「有名」にさせた大きな理由ではないでしょうか?
「モノ」は常に誕生しますが、多くの人に長く愛さなければ、すぐに廃盤になります。

そして、これは私事ですが、その椅子に魅力を感じる際に「どんな人がデザインしたか?」も大きく影響するようになりました。



私にとってデザインとは、その人の頭の中をのぞいているようなものと考えています。自己表現ともいえるでしょうか?だからこそ、「アート」だけではない実用品でもある椅子のデザインは魅力的です。

映画『ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイ』には、魅力的で愛すべき夫婦の姿を見ることができます。私が魅かれた点は、チャールズとレイの関係です。今まで「天才デザイナー夫婦」と認識していた、まるで遠いおとぎ話の中の人物たちが、本当に「人間」で、当たり前だけど、人間くさくてチャーミング。チャールズは、とても天才的でカリスマ性もあり、女性にモテモテでした。チャールズの事が大好きだったレイは、時にはきっと泣かされたに違いないと思います。しかも、彼女も一人の画家でありデザイナーだったにもかかわらず、世間ではいつも「チャールズの妻」として扱われている事に不満だったとの事。その気持ちも女性ならきっと実感することがあるはず。

そんなレイは、亡くなる直前、付き添い人に毎日のように尋ねたそうです。
「今日は何日?」と。
付き添い人が、日にちを答えると「まだ駄目ね」と。
そして、ある日、「もういいわね」といってその命を閉じたそうです。
その“ある日”は、チャールズの10年目の命日でした。



人には寿命があり、2人はもうこの世にいないけど、二人が作った椅子は今も製造され続けていますし、購入することができます。「タイムレスデザイン」、勿論そうです。でも私は、「マスターピース」と言いたいです。そちらの方が、愛すべき夫婦の彼らに敬意を示しているように思えるからです。

入社して1年くらいたった時、Shell Side Chair DSWがお店に入荷した際に1脚購入しました。とても座りやすいこの椅子は、普段は書斎に置かれ、特に主人がリモートワークの際に活躍しました。今はリモートワークが減り、座る頻度も減りましたが、だれも座らなくとも、その佇まいが凛としています。

私だけではなく、世界中で愛され続けるこの椅子は、間違いなく私の「マスターピース」。
ずっと美しく、堂々としていて、まさにその生みの親の二人のようです。


(text:オンラインスタッフ H)