Designer's History ポール・ケアホルム1929-1980,Denmark
木製家具が主流の中、「金属の美しさは木や革と同等の美しさがある」とし、金属を中心とした独自のデザインを貫いた鬼才。王立芸術アカデミー家具科3代目教授を務める。画家を目指していましたが、幼少期の怪我の影響もあり19歳で木工マイスターを取得し家具の道へ。1949年コペンハーゲン美術工芸学校夜間コースへ進学し、ウェグナーやヨーン・ウッツォンらに師事。在学中には、ウェグナー事務所に非常勤スタッフとしても勤務。卒業後フリッツハンセンに就職するも1年ほどで退社しますが、才能を見出したコル・クリステンセンとの出会いにより、以後1980年に亡くなるまで名作を数多く生み出しました。
ケアホルムの作品番号の法則
ケアホルムは、コル・クリステンセンと仕事をするにあたって家具をカテゴリー毎に分類することにしました。9つに分類されたカテゴリーに数字を設定し、空いている番号を選ぶことでその作品の品番としました。なお、コル・クリステンセン時代の頭文字はイニシャルから「EKC」。ケアホルムの死後、「PK」が付くのが通例となりました。また、この法則に当てはまらないアイテムもいくつかありますが、それはこのシステムが考えられる前であったり、PK33においては“3本脚だから”という理由のようです。
- 0 - 9チェア
- 10 - 19アームチェア
- 20 - 29ラウンジチェア
- 30 - 39アームレスト付きラウンジチェア
- 40 - 59ハイテーブル
- 60 - 79ローテーブル
- 80 - 89デイベッド&ソファ
- 90 - 99折りたたみスツール&チェア
- 100 - 119アクセサリー
1951

PK25(E. Kold Christansen,FRITZ HANSEN)
既にPKイズムが確立されている卒業制作
木工マイスターを取得後に入学した、デンマーク美術工芸学校での卒業制作。「エレメントチェア」という別名でも知られています。フラッグハリヤードを用いたのは、師事していたウェグナーの「フラッグハリヤードチェア」からの影響とも言われています。
1952

JH106/PP106(Thorald Madsens/PP MØBLER)
アフリカの原住民の椅子からインスピレーション
美術工芸学校の同級生である、ヨーエン・ホイとのコラボレーションによって生まれたチェア。工具を使わない安価な木製家具としてベンチ・テーブルと共にデザイン。ケアホルムの最初で最後の展示会となった「キャビネットメーカーギルド」に出品されました。
PK4(Thorsen mobler/FRITZ HANSEN)
PK25をリデザイン
PK25をリデザインし、大量生産かつ安価を目指してPK4は誕生しました。スケッチには黒・白の他に赤と青のフラッグハリヤードが書いてあったと言います。これまで以上に簡素化された構成は、彼の支持するピュリスムをより感じられます。
PK0(FRITZ HANSEN)
学生時代から温めていた幻のチェア
2枚の成形合板を組み合わせた、彫刻的なフォルムが特徴のチェア。学生時代のアイディアをフリッツ・ハンセン在籍時にデザインするも製品化は実現できず幻となっていましたが、2023年に「PK0 A」としてついに定番アイテムに加わりました。

PK60(FRITZ HANSEN)
PK0に合わせてデザインされたテーブル
フリッツ・ハンセン在籍時、材料の研究と大量生産に適した構造開発に力を入れていたケアホルム。そこから誕生したものの一つがこの「PK60」です。ガラスの天板と3つのアーチが組み合わさったベースはアメリカのイームズ夫妻やイサム・ノグチからの影響も感じられます。
1953

Molded Aluminum Chair(Chris Sørensen)
インダストリアルなデザインで新たな可能性を模索
アルミニウムを用いた、今までのケアホルムにはない新たな可能性を模索した一脚。商業的成功を確信し、自らリーフレットのデザインも行いました。Chris Sørensenにより製品化しましたが、当時20脚程度生産されたのみでした。
1954

Concrete Chair(F.Halvorsens Betonfabrik)
珍しいコンクリート家具シリーズ
高速道路の管理者であった義父の依頼によって誕生したコンクリート家具シリーズ。サービスエリアの他、ヤコブセンがデザインしたルードブレ市庁舎にも採用。リートフェルトのジグザグチェアからインスピレーションを得て、デ スティル運動で好まれた赤、黄、青、黒、白で塗装されました。
PK23(FRITZ HANSEN)
製造されることのなかった幻の1脚
FLスミス社の食堂用の椅子としてデザインしたが、採用されず製品化されることもなかった幻の1脚。縦に2分割されたシェルと、それをつなぐ優美なコネクターが特徴的。2024年にフリッツ・ハンセンが初の製品化を実現。
1955
PK1(E. Kold Christansen/PP Moblor/Carl Hansen & Son)
ターニングポイントとなったチェア
コル・クリステンセンはケアホルムの可能性を見出し、彼の家具を販売する「コル・クリステンセン社」を設立。記念すべき初めてのチェアが「PK1」でした。当初は、籐張りのPK1、レザーコードのPK2、フラッグハリヤードのPK3という3種がありました。
PK52(E. Kold Christansen/Carl Hansen & Son)
王立芸術アカデミー用のデスク
王立芸術アカデミーで教鞭を取る教師と、その授業を受ける生徒用に学部長の依頼でデザインしたもの。木材とスチールを組み合わせたシンプルなデザインながら、フレームと天板の間に隙間を空けることで、圧迫感のなさとケアホルムらしい美しさが際立ちます。

Academy Cabinet(Rud. Rasmussen)
ケアホルムには珍しいキャビネット
PK52と同じく王立芸術アカデミー用にデザインされました。生徒と教授の建築構造図面の収納用として用いられました。製作は、キャビネットメーカーとして名高いルッド・ラスムッセン工房によって行われ、ケアホルムのシンプルなデザインが職人技でより際立ちます。
1956
PK22(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
ミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞
ミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞した、ケアホルムの代表作のひとつ。ミース・ファン・デル・ローエ(以下ミース)の「バルセロナチェア」を超えるために誕生したのがこのチェアでした。発表当初は、キャンバスをPK21、レザーをPK22と分類していました。

PK61(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
構造部分までもが美しいローテーブル
PK22と共にデザインされたローテーブル。こちらも、ミースを意識したデザインに。スチールバーと天板というミニマルで美しいデザインは、“家具を構成するパーツや素材、構造を要素として見て取れるように”という思いが込められています。

PK101(E. Kold Christensen)
キャンドルを差し込むことで完成するオブジェ
螺旋状になったクロムスチール製の32本のアームが印象的なキャンドルスタンド。植物にみられる形状を抽象化したデザインです。スチールの硬さ・厳しさと螺旋を描いた柔らかなデザインの対比がその美しさをより高めています。

PK111(E. Kold Christansen,PP Møbler,Thosen Møbler)
自邸のダイニングの仕切りに使用
オレゴンパインの集成材を折り曲げたパネルを結合させた、独立型のパーテーション。140cmという高さは、座った際は区切られており立つと部屋を見渡せるとケアホルムが自邸で実験をして導き出したサイズでした。
1957
PK71(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
全て正方形で構成されたネストテーブル
3点のテーブルを入れ子式に格納できるネストテーブルです。 マットな表面、天然素材を好んだと言われているケアホルムにとって、アクリル素材の使用は挑戦でしたが、アクリルの光沢がフレームを引き立てることで成功を収めました。
PK11(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
38枚の木材で作られたアームが美しいチェア
スチールの3本脚とカーブしたアーム、一体型のバックレストで構成されたチェア。当初はPK51デスクに合わせてデザインされました。一見シンプルなアームは、38枚ものアッシュ材が接着してある木工技術の賜物です。

PK80(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
アート空間でも多数採用されるデイベッド
直角のスチール脚とレザーを組み合わせたデイベッド。ミースのバルセロナデイベッドからインスピレーションを受け、デザインされました。ニューヨーク近代美術館では、座面が高い特別仕様が使われており、日本でも国立新美術館で使用されています。
1959
PK33(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
ケアホルムには珍しい円のデザイン
スチールの脚とレザーのシートを組み合わせた、至ってシンプルなスツール。直線が多いケアホルムのデザインの中でも珍しい円を用いたデザインになっています。市庁舎だけの為に「PK33A」と呼ばれる少し大きいタイプも15脚だけ作られました。

PK31(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
正方形の比率が美しいモジュールソファ
背・座・アームまで別々となったモジュールソファ。一人掛けのタイプは縦・横・高さが全て76cm、座面の高さがその半分の38�僂箸覆辰討�り、均整の取れた見た目は、非常に美しい正方形の比率で構成されていることがわかります。
1960
PK9(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
自邸で愛用していたチェア
ケアホルムが自邸用にデザインし、PK54テーブルに合わせて使用していました。座面のフォルムは、妻ハンナが砂浜に座った跡からインスピレーションを受けたと言われています。また、特徴的な3本脚のフォルムからチューリップチェアとも呼ばれています。
1961
PK91(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
コーア・クリントへのリスペクトが込められたスツール
コーア・クリントがデザインした「フォールディングチェア」へのリスペクトを込めてデザインされたスツール。ケアホルムらしいステンレススチールの脚は、折りたたむ姿まで美しくなるよう細かな角度を計算してデザインされています。
1963

PK 600(ARCHITECTMADE)
大理石の巨大な灰皿
1956年にフレデリシア市庁舎の内装を手掛けた際に作られた、60cm四方・重さ250kgの黒大理石の灰皿。2階のホール用に壁付けされた5脚のPK26ソファとセットで設置され、オブジェとしても存在を示していました。現在はコンパクトなサイズも販売されています。

PK54、PK54A(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
伸長板までオブジェの様に美しい
PK9と共にケアホルムの自邸用で用いられている円形テーブル。立方体のスチール製ベースと丸い石天板で構成されています。メープル製の6枚のパーツを取り付けることで伸長することもできます。伸長板までオブジェの様に美しく保管ができるのも、ケアホルムならではの視点です。
1964

PK12(E. Kold Christansen)
トーネットの椅子からインスピレーション
トーネットの曲木の椅子に感化され、パーツで輸送が出来る物を目指してデザインされました。椅子の構造を極限までそぎ落とした結果、折り曲げた2本のスチールチューブと座面で構成されたミニマルで美しいチェアとなりました。
1965

PK24(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
ロココ時代の長椅子からインスピレーション
2 点の間に身体をつり下げることで機能することから、ケアホルムは「ハンモックチェア」と呼んでいました。1982年にルイジアナ美術館(デンマーク)で開催された、彼の展示会のポスターにも選ばれたチェアです。
1968

PK20(E. Kold Christansen/FRITZ HANSEN)
ケアホルム初のカンチレバーチェア
ミースのトゥーゲントハットチェアの影響を感じるカンチレバーチェア。スプリングスチールを採用し、上下左右にロッキングが可能になっています。レザーの座面は、PK22のレザーの端材を活用したいというコルクリステンセンの要望と、フレームを押さえる役割を果たしていました。
1971

PK27(E. Kold Christensen/PP Møbler)
木材に回帰した新たなフェーズのはじまり
独立して以降、ほとんど木材を使用したデザインをしていなかったケアホルム。ここで彼は再度木材の特徴を生かしたデザインをすることを試みます。PK27では、弾性に注目し、積層合板とゴムのショックマウントからなるラウンジチェアをデザインしました。
1974

PK13(E. Kold Christensen)
カンチレバーの研究を続けたケアホルム
PK20に続きカンチレバーの研究をつづけたケアホルム。今度は、ダイニングチェアに着手します。こちらはミースのブルーノチェアの影響を見て取れます。PK13はシートが脚と分離し、尚且つ脚間のバーも排除するというシンプルかつ挑戦的な構造を取りました。
1976

Louisiana Chair(PP Møbler)
ルイジアナ美術館の為にデザイン
ルイジアナ美術館の創立者兼館長であったクヌード・W・イェンセンに依頼され、コンサートホール用にデザインしたチェアです。メープルのフレームに背座は板を編み込んだ跳ね上げ式になっていて、音響にも配慮された構造になっていました。

PK28(PP Møbler)
Louisiana Chairを自宅で
Louisiana Chairに脚がついたモデル。直線的なシルエットの中に、座面のラインや半円のアームなどの要素で緩急を付けています。ダイニングチェアなども製作しており、それらはデザインをした場所にちなみ、「Horserød Series」とも呼ばれています。
1978

PK70(PP Møbler)
突板の組み合わせが美しい意匠に
ケアホルム“木の時代”のテーブルと言えば、「PK70」です。無垢のマホガニーのフレームと突板で構成されたケアホルムには珍しく全て木を用いています。構造を要素としてデザインしたケアホルムらしく、天板の突板の組み合わせ迄も美しい意匠としました。
PK8(FRITZ HANSEN)
プロトタイプのみが存在した幻のチェア
コルク天板の円形テーブルに合わせてデザインされ、妻である建築家ハンナ・ケアホルムの自邸にプロトタイプのみが存在していました。ルイジアナ美術館で開催された「ポール・ケアホルム展」に合わせて2007年にフリッツ・ハンセンより待望の商品化を果たしました。
1979
PK15(E. Kold Christensen,PP Møbler,FRITZ HANSEN)
ケアホルムが最後に手がけた作品
1980年に亡くなったケアホルムが最後に手がけたのは、曲木のチェアでした。PK12のリ・デザインとも言われており、デザイン当時に不可能であった曲げ木を実現。技術の進歩とクラフトマンシップを感じることができます。
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