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H.L.D. オンラインストアにてご紹介しているヴィブケ・クリントのラグアイテム。1980年代にコンサートホールや大使館、省庁、教会の装飾など、どらゆる建造物に収められました。現在はデンマークのブランド「NORDIC MODERN」がヴィブケ・クリントのラグを復刻するために立ち上げられ、生産しています。
こちらでは、ヴィブケ・クリントとそのラグについてご紹介します。多くのデザイナーを魅了したデザインとヴィブケ・クリントの想いを感じていただければと思います。
ヴィブケ・クリント(1927年12月13日 - 2019年)は、デンマークの著名なテキスタイルアーティストです。編集者であった父親の影響で幼いころから芸術に興味を持ち、いつも絵を描いている少女だったそう。ハンス J. ウェグナーやボーエ・モーエンセンの出身校でもあるコペンハーゲン美術工芸学校で織物を学び、1949年に卒業。師事していたゲルダ・ヘニングのもとで働き、1951年に工房を引き継ぎ、建築家モーエンス・コッホが設計したロスキレの聖ヨルゲンスビャウ教会などのためにテキスタイルを製作しています。
コーア・クリントの息子で造園家のモーテン・レ・クリントと結婚し、3人の子ども授かります。子育てと並行しながら、自身の創作やモーエンス・コッホ、ボーエ・モーエンセン、ハンス J. ウェグナーら、錚々たるデザイナーとのコラボレーションを通して、キャリアを築いていきました。
専業主婦になるよりも、画用紙を持って旅をしながら世界を体感したかったというヴィブケ・クリント。テキスタイルや織物に対する思いの強さを感じられるエピソードです。
2000年にはデンマーク女王から、文化、芸術、スポーツなどの分野で特に功績のあった人物に与える勲章である「ダンネブロ勲章」が授けられました。
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ヴィブケ・クリントのデザインは様々なデザイナーからも評価されており、コンサートホールや大使館、省庁、教会の装飾などあらゆる建造物に収められました。1951年よりゲルダ・へニングから引き継ぐ形でモーエンス・コッホと協力関係をより深めていきます。最初は職人として依頼されたデザイン通りのものを織っていましたが、後にヴィブケ・クリントとしてデザインから製作までを任されるようになりました。また、1956年に招待されたデンマーク装飾美術館でハンス J. ウェグナーと出会い、それをきっかけに教会用の椅子の張地を製作。さらに織物メーカーのC.オレセン社が立ち上げた「COTIL(※)」に消費者向けのカーテンやラグのためのテキスタイルデザインと製図を担当しています。
1955年に開催されたデンマーク工芸展で出会ったフィン・ユールは、自身がデザインした美術館の部屋に展示するためにヴィブケのラグを購入し、それをきっかけにその後もヴィブケのラグを好んで採用していたのだそうです。
※ COTIL…
C.オレセン社のエグゼクティブ・マネージャーであったヨルゲン・アントンが1956年に設立した家具用ファブリックのコレクション。C.オレセン社の代表をはじめ、建築家のベント・サリキャス、モーエンス・コッホ、ボーエ・モーエンセン、織物職人のリス・アールマンで構成された独立委員会によって選ばれた、高い技術と芸術性を備えたコレクションだった。コレクションは、工業用ラグとカーペット、家具用ファブリック、カーテン、旅行用ラグで構成され、すべて北欧のアーティストによって柄や色彩がデザインされた。ヴィブケ・クリントはC.オレセン社に最初に所属したアーティストのひとりでもある。
インテリアショップ“Paustian(ポースチャン)”でCEOを務めていたペーター・カンプマンとホールセールマネージャーであったナナ・フェンゲ。2人は、2017年に行っ
たヴィブケ・クリントのラグとテキスタイルの展示会をきっかけに、ヴィブケの娘でありナナ・フェンゲの幼馴染でもあったレ・クリントから2人にラグの生産の相談をされました。
“母親の手織りのラグがもう作れなくなり、消えてしまうかもしれない。”
レ・クリントからヴィブケのラグの生産をしたいか尋ねられた2人の答えは“イエス”。高度な手織りラグの製作に優れたメーカーを見つけた後、2018年に2人はNORDIC MODERNを設立しました。ヴィブケ・クリントというデザイナーとそのラグの魅力を広めることを目的として、日本、中国、オ
ーストラリア、スイス、イギリス、ベルギーなど世界中でヴィブケのラグの販売を行っています。
NORDIC MODERNが生産しているヴィブケ・クリントのラグは、クリントファミリー協力のもと慎重に選ばれており、デザイン、配色、品質においてオリジナルを忠実に再現しています。ラグはそのデザインによって「平織り」「ワープレップ織り」「二重織り」などを組み合わせ、繊細で複雑なテキスタイルを作り上げています。ワープレップ織と平織りを組み合わせるなど、卓越した技術をもった職人でなければ成しえない丁寧な作りです。
使用される糸は、ショールームと共に工場に併設されている染色工場にてオーガニック染料で染められたものを使用しており、品質へのこだわりが感じられます。
ヴィブケ・クリントは1987年発行の「Kristeligt Dagblad」誌で“良いカーペット”について、このように話しています。
“良いラグは、柔軟でしっかりしていて、密に織られているものです。
だから、擦り切れてもますますよくなっていきます。
擦り切れることにイライラしないで、糸に隠された新しい色彩や、
そこに現れる色の結びつきを発見し、楽しむべきです。
擦り切れたことで、これまで見えなかった色が顔を出してくるのです。”
ヴィブケ・クリントのラグを長く大切に使っていきながら、時と共に変わっていく表情を楽しんでいただければと思います。