Designer's Historyハンス J. ウェグナー1914-2007/Denmark
若干17歳で木工マイスター取得。その後も地元トナーで家具職人として経験を積み、21歳の時に兵役のためコペンハーゲンへ。デザインの必要性を感じ美術工芸学校へ入学した際に生涯の友モーエンセンと出会う。卒業後はヤコブセン事務所へ入所してオーフス市庁舎の家具デザインを担当。独立後はコル・クリステンセンの目利きと手腕により、その名が広がっていく。生涯手掛けた椅子は500脚を越える。妻インガはヤコブセン事務所の秘書だった。1940年結婚。
1938
The First Chair(Ove Lander)
23歳で発表した幻の作品
家具デザインを学んでいたウェグナーが、オーヴェ・ランダー社から2脚のみ発表した幻の作品。どこかフィン・ユールの作品を彷彿させる滑らかで優雅なフォルムの肘置きが特徴的です。
1943
JH410(CH410)/Peter's Chair(Johannes Hansen、Fredericia、Carl Hansen&Søn)
モーエンセンの長男に贈った子供用椅子
親友であるボーエ・モーエンセンの長男ピーターのためにテーブルと共にデザインした作品。プラモデル のように組立て・解体ができる遊び心のある椅子になっています。安全を考慮して、鋭角な部分は一切ありません。
1944
4283/CHINA CHAIR(FRITZ HANSEN)
中国 明時代の椅子をリデザインした作品
17-18世紀の中国の椅子(圏椅/クワンイ)からインスピレーションを受けて作られた椅子。伝統的な家具の 魅力を生かしつつ、時代に合うようリデザインしています。高度な技術を要する滑らかな曲線を描く肘置きが特徴。
J16/Rocking Chair(FDB Møbler/Fredericia)
モーエンセンと共同制作されたロッキングチェア
F.D.B社にて生産された、ボーエ・モーエンセンとの共同作品。製作当時、妊娠中の妻・ インガ夫人のために立ち上がりやすくゆりかご代わりにもなるよう考案されました。現在はフレデリシア社より販売されています。
1945
1783(PP66)/Chinese Chair(FRITZ HANSEN、PP Møbler)
チャイニーズチェアをリデザイン
前年にデザインしたチャイニーズチェアを、よりシンプルにリデザイン。削り出しの三次元曲線の笠木だった前モデルと異なり、曲木を使用。さらに脚に貫を渡し強度を高めています。フリッツ・ハンセン社より発売し、その後廃盤に。PPモブラーがディテールを見直し、1976年より「PP66」として再販しています。
1947
PP550/Peacock Chair(Johannes Hansen、PP Møbler)
羽を広げた孔雀のようなデザイン
ウィンザーチェアからの影響も見受けられるハイバックチェア。"ピーコック・チェア"という名前は、孔雀が羽を広げたようにみえることから、友人でありライバルだったフィン・ユールが付けたもの。
1949
JH501(PP501)/The Chair(Johannes Hansen、PP Møbler)
ウェグナー自身も納得、無駄のない美しい傑作
ウェグナー自身が「初めて自分の良さが出た椅子」と称した作品。フォルムの美しさ、座 り心地の良さなど、あらゆる観点で完成度の高い椅子です。こちらは座面に籐を使用したモデル。
JH503(PP503)/The Chair(Johannes Hansen、PP Møbler)
ウェグナーの大きな転機となった椅子
座面にレザーを使用したモデル。この椅子では「フィンガージョイント」と呼ばれる技法を用いています。この技法は後の作品にも使用され、ウェグナーの大きな転機となった椅子といえます。
JH512(PP512)/Folding Chair(Johannes Hansen、PP Møbler)
得意なテクニックによる折りたたみの椅子
“キャビネットメーカーズキルド展”にザ・チェアと共に出品された作品。座の延長が後ろ脚になる構造は、ウェグナーが得意とするテクニック。この作品以降もリデザインした椅子がいくつか発表されています。
1950
GE225(PP225)/Flag Halyard Chair(GETAMA、PP Møbler)
スチールとロープで構成された寝椅子
ウェグナーが浜辺で横になっている時に思いついたというシェーズロング。ヨットの旗を張るためのロープを背座に使用していることから“フラッグハリヤード”と呼ばれています。通気性も良く、快適な座り心地。
AP19(PP19)/Papa Bear Chair(AP Stolen、PP Møbler)
大きな熊を思わせる、ウェグナーの代表作のひとつ
大きな熊が両手を広げているかのようなユニークなフォルムが特徴的なラウンジチェア。ウェグナー作品の中でも最上級の座り心地を誇り、ウェグナー自身も大変気に入っていたのだそう。
CH23(Carl Hansen&Søn)
ジョイント部分が特徴的な椅子
ウェグナーがカール・ハンセン&サンにデザインした最初の椅子コレクションのひとつ。 背もたれの両端には"見せるジョイント"を採用しています。両端の貫までペーパーコードを張り、強度を高めています。
CH24/WISHBONE CHAIR(Carl Hansen&Søn)
ウェグナー最大のベストセラー
ウェグナーの作品で最大のベストセラーとなった名作“Yチェア”。中国明時代の椅子がルーツとなっており、チャイニーズチェア、ザ・チェアの延長線上に誕生したものです。Y字の背もたれが特徴的。
CH25(Carl Hansen&Søn)
背座にペーパーコードを使用した革新的なデザイン
戦時中の物資不足の中、背座に2重のペーパーコードを使用した革新的なデザイン。見た 目の美しさと強度を兼ね備えています。発表されてから現在まで途切れず生産され続けている人気の高い作品です。
1951
CH22(Carl Hansen&Søn)
ウェグナーらしい特徴が垣間見える作品
背もたれの両端に施された埋木、しっかりと強度を持たせたペーパーコード、座面の両端 に見られるフィンガージョイントなど、ウェグナーらしい特徴が随所に見られる作品です。
CH26(Carl Hansen&Søn)
60年以上眠っていた幻の作品
1950年にCH22と共にデザインされましたが、当時は製造されなかった幻の作品。CH22をもとにダイニングチェア仕様にデザインしたもので、2016年に初期作品の復刻と共に初の製品化となりました。
1952
JH505(PP505)/The Cow Horn Chair(Johannes Hansen、PP Møbler)
牛の角を彷彿させるデザイン
名前の通り、牛の角を彷彿させる笠木が特徴的な椅子。笠木の中央に施されたフィンガージョイントによる埋木がデザインのアクセントになっています。ヨハネス・ハンセン社、PPモブラー社で製品化されました。
4104/The Heart Chair(FRITZ HANSEN)
ウェグナー、初の3本脚の椅子
ウェグナー作品で3本脚の椅子はいくつか作られていますが、その原点がこちらの椅子と言われています。名前の理由は座面がハートに見えることから。3本脚は、凹凸のあるデンマークの石畳でも安定して座れます。
CH28P/T(Carl Hansen&Søn)
流線形のアームが特徴的
流線形のアームと広く取られた背もたれと座面が特徴的なデザイン。程よく角度が付けられておりゆったりと座ることができます。同シリーズにCH29がありますが、背もたれやジョイント部分のが異なり、全く違うデザインのようにも見えます。
CH29P(Carl Hansen&Søn)
木挽き台をヒントにデザインした椅子
木工職人に使用されてきた伝統的な木挽き台からインスピレーションを受けてデザインされた、"ソーバックチェア"という愛称で親しまれるユニークな椅子。1970年代半ばに生産が一時中断されましたが、その20年後にウェグナーの娘 マリアンネ氏の提案で復刻しました。
CH30P(Carl Hansen&Søn)
シンプルで使いやすい普遍的な椅子
ウェグナー作品の中でも普遍的でシンプルなデザイン。背もたれと後ろ脚のジョイント部分に埋木を使い、さりげないアクセントを加えています。多くの人が普段使いできるものを提供したいというウェグナーの想いが感じられる作品です。
AP20(CH71)(AP Stolen、Carl Hansen&Søn)
座り心地はベアチェア譲りの快適さ
“ベアチェア”を小ぶりサイズにしたようなアームチェア。“ミニベア”という愛称で呼ばれています。APストーレン社製は販売期間が短く、カール・ハンセン&サンが2018年に復刻するまではヴィンテージ市場でしか見ることのできない希少な作品でした。
1953
JH540(PP250)/The Valet Chair(Johannes Hansen、PP Møbler)
1脚で身も周りのものをまとめて収納
背面はハンガーとして、座面は引き起こすことでズボン掛けに。さらに座面のポケットに小物も収納できます。1脚で身の回りのものをまとめられることから、“ヴァレット(従者)チェア”や“バチェラーズ(独身者)チェア”と呼ばれています。
GE290/Easy Chair(GETAMA)
細部にこだわりが見える、ロングセラーのソファ
ウェグナーが手掛けたソファの中で最も人気があるのが、ゲタマ社のためにデザインしたGE290。横や背面からのフォルムも美しく、細部にウェグナーのこだわりが感じられます。
1954
AP28(GE181、CH78)/Mama Bear(AP Stolen、GETAMA、Carl Hansen&Søn)
熊の手にも見えるアームが特徴
背もたれの左右に翼のような丸みをもったウィングバックチェア。肘掛けが熊の手に見えることから“ママベアチェア”という愛称で呼ばれています。APストーレン社から発売した「AP27」も“ママベア”と呼ばれています。
1955
CH88P(Carl Hansen&Søn)
無垢材とスチールを組み合わせた椅子
ヘルシンボリ国際博覧会に出展するためにデザインした作品。カウホーンチェアを彷彿させる笠木が特徴です。スチール脚にすることで軽量かつ積み重ねも可能に。当時はプロトタイプのみでしたが、2014年に復刻しました。
JH502(PP502)/The Swivel Chair(Johannes Hansen、PP Møbler)
アート作品のような笠木が魅力
ヨハネス・ハンセン社のためにデザインした椅子。彫刻作品のような笠木が特徴で、3つのパーツをフィンガージョイントで接合しています。脚部は発表後何度か見直され、製造時期によってキャスターの種類が異なります。現在はPPモブラー社が販売しています。
1956
CH20/Elbow Chair(Dining Chair)(Carl Hansen&Søn)
約半世紀の時を経て復刻
デザインした当初はコストなどの問題でプロトタイプのみ製造され、製品化されませんでした。2005年にカール・ハンセン&サンより製品化されています。座面裏をプライウッドの枠組で強化し、貫を持たず4本の脚のみで笠木を支えています。
1957
CH33P(Carl Hansen&Søn)
流線形の背もたれが印象的な椅子
1950年代に流行した流線形のデザインを背もたれに起用した斬新なデザイン。脚は外側に広がる構造になっており、見た目には軽やかに、機能面では安定性と快適性をもたらしています。
1958
AP40(CH401)/Kastrap Series(AP Stolen、Carl Hansen&Søn)
カストラップ空港のためにデザインしたシリーズ
コペンハーゲンにあるカストラップ空港の港内ラウンジ用にデザインしたもので、"カストラップシリーズ"としてスツールやキャスター付きの椅子など10種類ほどのバリエーションが存在しています。サイドから見えるスチールのフレームがエレガント。
1960
AP46(JH46、EJ100)/The Ox Chair(AP Stolen、Johannes Hansen、Erik Jørgensen)
雄牛のようなツノが特徴的なデザイン
雄牛のツノを思わせる背もたれが特徴的なイージチェア。全体的に丸みのあるデザインで、包み込まれるような座り心地。どんな座り方をしても心地よく、ウェグナーのお気に入りでもありました。
CH445/Wing Chair(Carl Hansen&Søn)
ウイング上に広がるデザインが特徴
ウィング状の広がった背もたれが特徴的。発表された当時は、わずかしか生産されませんでした。2006年にカール・ハンセン&サンから復刻されています。オックスチェアと同様に様々な姿勢で座ることができます。
1961
JH518(PP518)/The Bull Horn Chair(Johannes Hansen、PP Møbler)
"雄牛"の名に相応しいデザイン
“カウホーンチェア”に少し似ているようにも見えますが、ブルホーンチェアは笠木の両端が長く、“雄牛”という名前に相応しいフォルムになっています。フィンガージョイントによる埋木がデザインのアクセントになっています。
1962
CH36(Carl Hansen&Søn)
"シェーカーチェア"をモチーフにした、軽量かつ美しい椅子
アメリカのシェーカー教徒の椅子をモチーフにリデザインしたもの。コンパクトかつ軽量で扱いやすいことから、ダイニングチェアとしてはもちろん、結婚式場や教会などでも使用されることも多いのだそう。
JH509/Easy Chair(Johannes Hansen)
ウェグナーの力量の高さを感じられる、無駄のない椅子
ウェグナーの作品の中でも比較的シンプルなデザインのイージーチェア。主張は強くありませんが、どの角度から見ても美しく、普遍的で飽きの来ないデザインになっています。シンプルだからこそ、ウェグナーの力量の高さを感じることが出来ます。
1963
CH07/Shell Chair(Carl Hansen&Søn)
成型合板を用いた、前衛的なデザイン
第二次世界大戦後、成型合板による家具作りに挑戦した中のひとつ。前衛的なデザインは、当時大きな注目を集めましたが、同時に批判的な意見もあってか、発表当時は50台程しか製作されませんでした。現在はカール・ハンセン&サンから復刻しています。
1965
CH47(Carl Hansen&Søn)
無駄のない機能美を追求した椅子
一切の無駄を省いた、洗練されたデザイン。背もたれが緩やかに傾斜しており、ゆったりと座ることができます。CH36と同様に、こちらもアメリカのシェーカー家具からの影響が感じられます。
PP701/Minimal Chair(PP Møbler)
ウェグナー夫妻が愛した椅子
インガ夫人のために自宅ダイニング用として手掛け椅子。自宅で使う椅子を探していたウェグナーが、イメージ通りのものに出会えず自らデザインをしたのだそう。2020年にチーク材仕様が世界50〜60本限定で生産されました。
CH162・CH163(Carl Hansen&Søn)
膨大な資料の中から見つかった名作
カール・ハンセン&サンが、ウェグナーの資料の中から1965年にデザインされたソファを復刻。前脚からアームに向けて末広がりに伸びた木製パネルは、見た目の美しさと張替えのしやすさを考慮した、ウェグナーらしいデザインです。
1969
PP201/Dining Chair(PP Møbler)
20年の時を経て、"ザ・チェア"をリデザイン
名作“ザ・チェア”のリデザインとして発表されたのが、こちらの椅子。“ザ・チェアと変わらない使い心地で、より安価で手に入る椅子”をテーマに作られたものです。笠木をプライウッド製にし、材の無駄取りを無くしています。
1970
JH801(CH101)(Johannes Hansen,Carl Hansen&Søn)
スチールとレザーを組み合わせた椅子
スチールとレザーを組み合わせたラウンジチェア。正面から見ると重厚感があり、横から見ると浮遊感のあるデザインに仕上げられています。背の部分が低くなっているため、圧迫感がなくコンパクトな印象を与えます。2008年に復刻されました。
JH811(CH111)(Johannes Hansen,Carl Hansen&Søn)
ウェグナーの細かな配慮が垣間見える椅子
JH801と同様に、スチールとレザーのみで構成された、ウェグナー作品の中でも珍しいシリーズ。座のすぐ下の後ろ脚が補強のためにねじられています。直接触れるアーム部分にはレザーが使われています。
1975
PP62/Captian's Chair(PP Møbler)
豪華客船のためにデザインした椅子
“ザ・チェア”のリデザインモデル。DFDSフェリー社の豪華客船のためにデザインされたものです。CH201と似ていますが、背の部分が広がり、背中をより支えやすくなっています。座面が革張り仕様の「PP52」もございます。
1986
PP130/Circle Chair(PP Møbler)
構想から20年を経て製品化された名作
円形のフレームとロープで構成された椅子。構想自体は1965年にあったものの、当時の技術では実現不可能と考えられていました。その後、PPモブラー社が特別な機械を開発し、20年後の1985年に待望の製品化となりました。
1987
PP68/Dining Chair
(PP Møbler)
ウェグナーの人生最後のダイニングチェア作品
デンマーク国有鉄道の就航するフェリーの客室用の椅子として作られた、ウェグナーの人生最後のダイニングチェア。今まで製作した経験が全て詰まったウェグナー作品の“集大成”と言われてます。
1990
PP240/Conference Chair(PP Møbler)
ウェグナーが生涯最後に手掛けた椅子
ウェグナーが生涯最後にデザインした、会議用の椅子。長時間座っていても疲れず快適な座り心地。JH509などのイージーチェアからの流れを汲んだデザインと思われます。
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