H.L.D. オンラインストア スタッフが、
毎月ひとつの名作=マスターピースに思いを馳せるコラムです。
肩の力を抜いて、普段のページではあまり書くことのないようなことを語ります。
仕事や家事のひと休憩や、帰宅中の電車の中、くつろぎの時間の合間など
是非、気軽にご覧ください。
第4回時計に与えられた“新たな役割”

現行品やヴィンテージ、リプロダクトなどで、誰しも一度は目にしたことがあるだろう、ジョージ・ネルソンの“ボールクロック”。このデザインを模した類似品なども数多く存在しており、それほどに強烈なインパクトを世界中に残した名作といえます。
時間を示す数字もなければ、細かなインデックスも存在しない、時計としては少しアバウトなようにも見えます。恐らく、それは私が時間に厳しい日本の暮らしに慣れてしまっているからかもしれません。
ジョージ・ネルソンがこの時計をデザインするにあたり調査をしたところ、多くの人が「時計の数字ではなく、針の位置を見ている」という結論に至ったのだそう。アメリカでは「5分」「10分」といった数字ではなく「少しの間」というように、もう少し広い視点で時間を見ているようです。さらに、第二次世界大戦終了後は腕時計が普段使いされるようになり、壁掛け時計を見る機会も少なくなっていたこともあり、時間を示すだけでなく“インテリア”としての新たな役割が加わった、この時計が誕生したのです。

私は腕時計を見ながら、さらにスマートフォンのデジタル時計も確認してしまうほど、外出先では細かな時間を気にしてしまいます。帰宅した際に目に入ってくるこの時計を見ると、時間にとらわれず自由に過ごしていいことを許された気がして、とても気分がいいです。
私の中では時計であり、アート作品でもあり、さらにON/OFFを切り替えてくれる欠かせない役割も持ち合わせています。
(text:オンラインスタッフ M)