月刊  「マスターピースとわたし」(14) - “引き継ぐ”ということ/[すべて正規品]デザイナーズ家具・ブランド家具通販・北欧家具通販【H.L.D】

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H.L.D. オンラインストア スタッフが、
毎月ひとつの名作=マスターピースに思いを馳せるコラムです。
肩の力を抜いて、普段のページではあまり書くことのないようなことを語ります。

仕事や家事のひと休憩や、帰宅中の電車の中、くつろぎの時間の合間など
是非、気軽にご覧ください。

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第14回“引き継ぐ”ということ

子どもから見た親とは、どのようなものでしょうか?
それも世界的に有名な椅子のデザイナーであったなら?

もし、私がハンス J. ウェグナーの娘だったら、もちろん偉大な父の元に生まれた事はうれしいですが、本音はうれしくないかもしれません。私自身はプレッシャーに弱いし、父と比べられるし、遺品のデザインの権利とか色々面倒な事とも向き合うのかなと無意味で身勝手な妄想をしてしまいます。

実際の娘のマリアンヌ・ウェグナーさんのインタビュー記事を読んだことがあります。 元々、マリアンヌさんは建築家で、デンマーク王立芸術アカデミーで教師をされていたそうです。その頃、父であるハンス J. ウェグナーの長年の友人であり家具デザイナーのボーエ・モーエンセンが亡くなり、そのことがきっかけで、“今、父が亡くなるようなことがあったら、デザインスタジオやウェグナーの家具の品質の維持が心配になった”と述べられていました。そして、今なら10年くらいは父と働いて学ぶことが可能と思い、教師を辞めて一緒に働くようになったとの事。

その記事を読んで、にじみ出る親を想う気持ち、愛情はもちろんのこと、ウェグナーが決して子どもに家具作りや自分の跡継ぎを強要しなかった事の愛の深さを感じました。



ボーエ・モーエンセンの息子のためにデザインしたピーターズチェア

ウェグナーは家族だけでなく友人のボーエ・モーエンセンへの想いの深さも、彼の子供の為にデザインされた「ピーターズ チェア」が物語っています。“ピーターズ”という名前はモーエンセンの長男ピーターのためにデザインした故です。この椅子には、戦時中の為、贈りたいと思えるお祝いのプレゼントが見つからず、自らの手で贈りたいと思う椅子を誕生させたという心温まるエピソードがあります。ウェグナーの友人とその息子を想う気持ちが伝わってくると同時に1944年にデザインされたこの椅子が、約80年の現在も製造させて、多くの「ピーター」達が使っていると思うととても素敵な事だなぁと思いませんか?なんたって、一番最初のピーターは80歳になるということです。



ウェグナーが作った椅子のなかで、一番知られている椅子といえば、「CH24」。「Yチェア」の愛称でおなじみです。このチェアも世界中の多くの人に愛用され、もちろんこれから先も引き継がれていくことでしょう。「SDGs」「持続可能な社会」と近年声高く言われています。身近にできるSDGsとは、決して難しい事はなく、「長く愛用し、引き継ぐ」ってことではないでしょうか。

ウェグナーは、ずっと前から、SDGsを実現できる家具をデザインしていましたが、その精神は、無理やり周りに押し付けるようなことはなかったように思え、彼の姿勢や考えがそのデザインに魅かれた人々により愛され引き継がれているのかなと、私はマリアンヌさんのインタビューを読んで改めて感じました。



我が家も去年「CH24」を2脚購入しました。もう少し子供たちが大きくなり大人用の椅子を使うようになったらと思い、まだ、ダイニングにはおいておりませんが、これから何十年も使うつもりです。でも何十年といっても人の寿命は短いものです、きっと使えても40年ぐらいでしょうか?

そのあとできれば、子ども達に引き継げたらと思うのですが、ウェグナーの精神を見習って強要はせず、けれど、時々デザイナーのウェグナーの事や椅子の事、ケアの仕方や座面の張り替えの事も含めて話しておこうと思っています。

ただ「その時」になった時、引き継ぐか否かは子どもの気持ち次第ということでいいのです。

(text:オンラインスタッフ H)