H.L.D. オンラインストア スタッフが、
毎月ひとつの名作=マスターピースに思いを馳せるコラムです。
肩の力を抜いて、普段のページではあまり書くことのないようなことを語ります。
仕事や家事のひと休憩や、帰宅中の電車の中、くつろぎの時間の合間など
是非、気軽にご覧ください。
第16回 インテリアには、ファンタジーとイマジネイションと「無難」
皆様はインテリアにこだわりがありますか?
それとも、そこまでこだわりは持っていませんか?
インテリアにこだわりのある方もない方も、どちらもいて当然です。
特に「仕事」にプライオリティを置いている、もしくは置かざるを得ない環境の時は、インテリアの事は二の次・三の次です。私も、以前はとにかく寝る為に帰る「寝床」といった感じでした。
それからしばらくして、“インテリアにもう少し気を使ってみよう”と思ってから、すぐにこだわりを持ったかというと、決してそうではなく。とにかく「無難」を目指していました。
誰が見ても、何とも思わ「ない」、とにかく汚くみえ「ない」、不快に感じ「ない」。基本的に「ない・ない」だったように思えます。
とはいえ、100%無難が好きというわけでもなく、派手で異国を感じる色や小物も好きだったりします。メキシコやトルコ、インドなどの民芸品を集めていた事もありますし、実際にその国に行ったり、1か月ほど滞在していた事もあります。どちらが本当の趣味・嗜好なのかははっきりしていませんが、
誰でも他人にはあまり理解されにくい“自分だけが好きなもの”があり、100%無難なものの中では息がつまるのではないかと思うのです。
皆様はいかがでしょうか?
私がヴァーナー・パントンを知ったきっかけは「パントンチェア」からでした。とっても特徴的で、カラフルで、個性「あり」のデザインです。
ご存知の方も多いかと思いますが、ヴァーナー・パントン(1926-1998)は、コペンハーゲンの王立美術アカデミーで建築を学んだ後、アルネ・ヤコブセンの建築事務所を経て、1955年にデザイン事務所を設立したデンマーク人デザイナーです。色、フォルムの個性的なデザインが特徴で、北欧のデザイナーとまた違った彼にしか作れないようなデザインは世の中に衝撃を与えました。
先日、メーカーの方から伺った話のなかで、衝撃を受けたパントンのメッセージがありましたので、少しご紹介します。
“わたしの仕事の主たる目的は、人々にもっとイマジネイションを行使するよう強いることなのだ。人々の多くは、グレーとベージュで味気ない日々をおくり、色を使うことを死ぬほど恐れている。ライティング、カラー、テキスタイル、家具、そして最新のテクノロジーを使った実験で、わたしは新しい方法を示したい。人々がファンタジーとイマジネイションを使い、生活環境をもっとエキサイティングなものにするよう、励ましたい。”
(※参考文献:スペースエイジ・インテリア, 株式会社グラフィック社)
特に私が衝撃を受けたのは、“グレーとベージュで味気ない日々をおくり、色を使うことを死ぬほど恐れている。”のところ。まさに私だ…!
パントンは、あの時代に「もっと自由でいいじゃないか」という事を言っていたと思うと、すごく衝撃でした。
大前提ですが、「無難」のカラーや形を否定しているわけではありません。
ただ、もう少し、パントンの言葉そのままにインテリアはファンタジーやイマジネイションを使い、エキサイティングでいいかと改めて思ったのです。
私が所有しているパントンのデザインは、オブジェとして飾っているミニチェアのパントンチェアのみです。それも黒のみ。もちろん黒が好きだからでもありますが、なにより「ほかのインテリア」と合うかどうかでインテリアに加えました。全然エキサイティングではありませんね。
近々、パンテラランプを手に入れようと思っているのですが、今度こそ、本能でエキサイティングな気持ちにしてくれるカラーを選ぶつもりです。現行品として販売開始された当初は「オパール・ホワイト」しかありませんでしたが、今は素敵なカラーバリエーションから選ぶことができます。自分が選ぶカラーはなんだろうと自分の事なのにワクワクしています。誰の為でもなく、自分や家族さえ「あり」であれば、何も問題「ない」。これこそ、本当の意味の「無難」ではないでしょうか?
(text:オンラインスタッフ H)