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H.L.D. オンラインストア スタッフが、
毎月ひとつの名作=マスターピースに思いを馳せるコラムです。
肩の力を抜いて、普段のページではあまり書くことのないようなことを語ります。

仕事や家事のひと休憩や、帰宅中の電車の中、くつろぎの時間の合間など
是非、気軽にご覧ください。

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第18回 テーブルに込められた“アートとデザイン”

かれこれ、10年以上前の話です。
当時、わたしはWEBマガジンを製作する会社に勤めており、展覧会やイベントの取材に行くことがよくありました。特に10月終わりから11月頭にかけては、東京都内のあちらこちらでデザイン関連のイベントが開催され、走り回っていたのを覚えています。

色々なイベントで数多くの作品が並ぶ中、ふと目を奪われたプロダクトがありました。それは、ハイメ・アジョンが九谷焼の窯元である上出長右衛門窯とコラボレーションした作品。九谷焼は鮮やかな色絵装飾が美しい焼き物ですが、展示されていたものは独特なタッチで描かれたアート作品のようでした。
(※ 現在は絵付けをシンプルにした“FORMA CHOEMON”シリーズとして販売されているようです。)



現代アーティスト、ハイメ・アジョン。米国のTimes誌では“現代の最も活躍するクリエイター100名”のひとりに、イギリスのWallpaper Magazineでは“10年間で最も影響力のあるクリエイター”のひとりに選ばれるなど、世界が認める人気アーティストです。リヤドロやバカラ、スワロフスキーといった大手ブランドとのコラボレーションが話題となりました。

ハイメとの出会いは衝撃的でしたが、その後当時の職場を退職してデザインやアートと関わることがほとんど無くなり、ハイメの存在もわたしの中で薄れていきました。



そして時を経て、わたしがハイメの作品と再会したのが、ダイニングテーブル「ANALOG」でした。 さすが、ハイメ・アジョン。まるで天板から脚が生えてきたかのような独特なフォルムに、再びわたしは目を奪われてしまいました。一般的なテーブルの脚は水平に配置するところ、ハの字型にしているのもこだわりがあるのだろう…と第一印象は「アートなテーブル」というイメージでした。

しかし、ANALOGが生まれた背景を知ったことで、わたしの中でどんどん印象が変わっていきました。



英国では「自宅の夕食に招くこと」が最高のおもてなしとされていた時代があり、普段はダイニングテーブルを使用せずに週末や親族の集まりなどの際に使用されることが多かったそう。その後、普段使いされるようになっていき、家族や友人とのコミュニケーションツールとしての役割を担ってきました。ですが、現代では生活環境などによってダイニングテーブルを置かないでインテリアを考える方も少なくないと思います。大きな家具はスペースを取るので、そういった考えがあるのも納得です。

ハイメは、“現代において、ダイニングテーブルを通したコミュニティが希薄になっているのでは”と考えたそうです。アナログという名前には“従来の通り、テーブルが人々の暮らしの中心であってほしい”という思いが込められているそう。そんなハイメの思いを知ってからこのテーブルを見ると、細部に渡って“コミュニケーション”の取りやすさにこだわっていることがわかります。





例えば、天板の側面は直線でも曲線でもなく、柔らかな六角形といった印象。テーブルに座った際に自然と少し角度をつけて座ることになるので、体を相手に向けることになります。アートな印象だった脚は、平たい脚をハの字型に配置することで、どこに座っても快適なスペースを確保できるため。天板も厚みを抑えた設計になっていることで、スペースを必要とするダイニングテーブルでありながら不思議と圧迫感がありません。
「アートなテーブル」という第一印象は薄れ、コミュニケーションを大切にした「デザインされたテーブル」という印象に変わっていきました。



昔働いていた職場の上司に「アートは作家の世界観の表現、デザインは問題解決のための表現」という話を聞いたことがありました。もちろん、デザインの中にもアートの要素は存在していると思いますし、まったく分断されたものではないと思いますが、その時の上司の言葉を借りれば、アートでありつつも、“デザインされたテーブル”なのでしょう。

H.L.D. 実店舗にもANALOGテーブルを展示しております。ご来店いただいた際は、是非座っていただき、ハイメの思いを感じていただければと思います。

(text:オンラインスタッフ M)