スチールと張地のみで構成された、ラウンジチェアの歴史的名作
ハンガリー出身の建築家、Marcel Breuer(マルセル・ブロイヤー)が1925年にデザインした「Wassily Lounge Chair(ワシリー ラウンジチェア)」。こちらは、自転車のハンドルから着想を得てデザインされたもので、スチールパイプを用いた世界初のチェアとされています。
“ワシリーチェア”という名前は、ロシアの画家ワシリー・カンディンスキーに由来しています。“クラブチェア B3”という名称だったラウンジチェアは、当時は前衛的に捉えられあまり評価されていなかったのですが、ワシリーはこの椅子を気に入っていたのだそう。ブロイヤーが、ワシリーの誕生日のこの椅子を贈ったことからこの名称で呼ばれるようになったそうです。
当時、デ・ステイル運動の構成主義理論に影響を受けたブロイヤーは、古典的なクラブチェアの形状から要素を減らした線と面で構成するデザインを目指し、スチールパイプの実験を開始。その結果、スチールワイヤーと張地のみで構成されたこれまでにない椅子を作り上げました。1934年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションとして所蔵されています。
座面に程よく傾斜がつけられていることで、座ると自然に体が沈み込み、レザーの張地がフィットします。使い込むほどに張地が柔らかく深みのある色へ変化していくのも、この椅子の魅力です。また、スチールを曲げて作られたフレームは、一般的なラウンジチェアと比べて余白があり空間を圧迫しません。使わない時も、ただそこに置かれているだけでアート作品のような美しさがあります。
マルセル・ブロイヤーの歴史的名作を、是非ご自宅で体感してください。