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Vitra Design Museum
ヴィトラデザインミュージアム
text: H.L.D. スタッフ 清水
1989年竣工のVitra Design Museum(ヴィトラデザインミュージアム)は、アメリカに拠点を置く、カナダ・トロント出身の建築家Frank Gehry(フランク・ゲーリー)が手掛けたヨーロッパ初のプロジェクトです。
一度はその名を耳にしたことがある建築家だと思いますが、意外にも、彼が建築家として注目を集めるようになったのは50歳を過ぎてからでした。代表作〈 ゲーリー自邸(1979年)〉がその転機となっています。自邸は新築ではなく、1920年代に建てられた2階建住宅を増築リノベーションした建物です。鉄板や米松など日常的な材料を用いながらも、水平垂直以外の「斜材」を入れることで新しい空間形成を試みています。当時は賛否両論あったようですが、この作品が、後のヴィトラデザインミュージアム(1989年)やビルバオのグッゲンハイム美術館(1996年)、ウォルト・ディズニー・コンサートホール(2003年)など、ゲーリー独特の造形へとつながっていることは確かでしょう。
ヴィトラデザインミュージアムは、白い石膏ファサード、亜鉛の屋根、そして単純な幾何学的形で構成されています。個々の構造が破片へ分割し、「Deconstructivism(デコンストラクティビズム)=脱構築主義」の概念に基づいて設計されており、動的であり彫刻のような建築でした。ゲーリーの造形力はさることながら、建築としての機能を備え、平面計画へ落とし込むだけでなく、構造条件を満たして施工してしまう”実現力”は本当に素晴らしいと思います。設計者と同じくらい、構造設計者と施工者の方々とのチーム力がすごいですね。
現在は、ゲーリー・テクノロジーズという技術会社と協働し、コンピューター技術を駆使して、デザイン・設備・建材・建設・工程などのすべての情報を統合しながらプロジェクトを進行しているそうです。この手法を取り入れるきっかけとなったのも、ここヴィトラデザインミュージアムでした。図面通りに施工された螺旋階段でしたが、やはり2次元上の図面では求める完成度まで到達できず限界を感じ、このプロジェクト以降、3次元のアプローチを取り入れるようになったと聞きます。
内部は、ギャラリーを設けた展示室が4つ。どれも均一な白壁で構成されており、基本的な採光はトップライト、展示作品には補完照明としてスポットライトが当てられていました。当初、プライベート・ミュージアムとして4,000点を超える椅子や家具を所有するヴィトラ・コレクションを保管、展示するとして計画されたそうですが、インパクトのあるデザインが話題を呼び、今では各種展覧会・巡回展の開催や、ミニチュアチェアの生産、若手デザイナーを育成するワークショップなど、多岐にわたるデザイン活動を行っているそうです。
コレクションの保管展示という”博物館”としての用途を持たせるために、シンプルな空間を提供する「白い立方体」ではあるものの、その解釈は実に自由で彫刻的な建築でもあります。一見、相反する要素のようですが、ゲーリーによって再解釈された「白い立方体」には訪れた者だけが味わうことのできる驚きと感動、そして来訪者を魅了する力がありました。
展示は、1〜2ヵ月毎に入れ替えるそうです。
この日は、アメリカで活躍したデザイナーであるヴィクター・パパネック(1923–1998)の世界初の回顧展「Victor Papanek The Politics of Design」が開催中でした。パパネックは、フランク・ロイド・ライトに学び、バックミンスター・フラーの影響を大きく受け、1970年代のサステナイブルデザイナーのパイオニアと言われている人物です。また「生きのびるためのデザイン(邦題・1971年)」の著者としても知られています。同展は、デザイナー、作家、活動家としてのパパネックに焦点を当てた世界初の回顧展として開催され、ドローイング、オブジェクト、フィルム、原稿、プリントなど、未公開品も含めて展示されていました。
ヴィトラデザインミュージアムは世界有数のデザイン博物館のひとつであり、デザインに関わる企画の他、建築とアートに関連する展覧会も開催しているとのことです。展覧会に並行して、隣接するヴィトラデザインミュージアムギャラリーや、ショウデポ、そしてキャンパス内の各所で展覧会に関連したイベントが行われています。また、所有する家具・照明・デザインアイテムなど膨大なコレクションは、同ミュージアムが主催する展覧会として世界中の美術館を巡回しています。行かれた方も多いと思いますが、2018年〜19年にかけて日本で開催されていた企画展「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」も、ヴィトラデザインミュージアムとアルヴァ・アアルト美術館との共同企画による国際巡回展でした。
最後にゲーリーの言葉を紹介します。
2015年に21_21 DESIGN SIGHTで開催されていた企画展「建築家 フランク・ゲーリー展 "I Have an Idea"」で来日していた際に、同展のトークイベントで語られていたものです。
「日本にも、世界中のほかの国にも、建築や芸術の歴史は遺産として根付いています。そしてわれわれは遺産とまったく同じ創造を繰り返すのではなく、現代という時代の文脈のなかで、新たな作品をつくりだしていこうと考えているわけですが、そこに遺産のコピーではない人間的な新たな建築、街を築いていこうとすることが大事だと思います。歴史を理解し、人間性を感じられるような建築を復興させたいと思っています。それはつまり、コピーではなく、現代における新しい言語を探していくということです」
ゲーリーの圧倒的な建築に対し、世界各国の人が惹きつけられ親しみにも似た感情が生まれるのは、歴史の延長線上に現代の新しい建築をつくっているからなのかもしれません。
建築概要
設計:フランク·ゲーリー(1929年)竣工:1989年
展示スペース:600��
材料:コンクリート、チタン亜鉛パネル
用途:各種展覧会・巡回展の開催、ミニチュアチェアの生産、若手デザイナーを育成するワークショップなど
オフィシャルサイト:https://www.design-museum.de/
Architecture
- 建築について -
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No.01
Vitra Haus
イエガタが積み重なった、その名の通り「ヴィトラの家」。家具・インテリアの視点からも建築の視点からも魅力的です。
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No.02
Dome
幾何学体のテント、Domeは1975年にCharter Industries社が制作したもの。現在はイベントや展示会の会場として使用されています。
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No.03
Vitra Design Museum
建築家フランク・ゲーリーが手掛けたデザインミュージアム。4,000点を越えるコレクションの保管や展覧会の開催など多岐にわたるデザイン活動が行われています。
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No.04
Fire Station
脱構築主義を代表する女性建築家 ザハ・ハティドが手掛けた消防署。彼女のプロジェクトがはじめて実現したのが、こちらのFire Stationでした。
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No.05
Conference Pavilion
安藤忠雄、初の海外作品となった会議室。大通りの桜並木が主役になることを考え、自然に対する配慮が随所に見られます。
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No.06
Petrol Station
ジャン・プルーヴェと弟のヘンリーによって1953年に設計されたガソリンスタンドです。ノックダウン式の構造で、1〜2名で組み立てることが可能になっています。
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\ NEW /
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No.07
Factory building
日本の建築家ユニットSANAA設計による生産工場。楕円の構造により、出荷トラックの旋回スペースを確保し物流面においても機能的なデザインになっています。

















































